「進撃の巨人」と解剖学 – その筋肉はいかに描かれたか
美術解剖学の見地から、「進撃の巨人」の描写を論じる。
『進撃の巨人』は諫山創原作のマンガ(2009年〜)と、それをもとにしたアニメ、ゲーム。いまは鬼滅や呪術の影になったが、かなり流行った。
「巨人」はヒトに似た形の巨大な怪物で、多種あり、一部は骨格や筋のようなものが露わになった外観を呈する。
本書の著者は美術解剖学者で、かつて東大医学部で解剖学を学び、人体解剖も行った。現在は東京藝術大学教授。群馬県出身で、高崎高校卒。
美術解剖学というのは、絵画や彫刻のリアリティのために、人体や動物の運動器系の形態と働きを学ぶ学問。ダ・ビンチやミケランジェロも人体解剖を深く学んだ。
本書の筆者は、作品が進むにつれて作者の画力が上がって描写のリアリティが増しているのを指摘し、美術解剖学の効用だと読み解く。
『進撃の巨人』の巨人は、人体っぽさを踏まえながらも、実在し得ないような構造を創作しているわけで、それによって恐怖や不快感が増している。そこを敢えて巨人たちの解剖を、人体解剖学に基づいて検討していく。
Amazon.co.jpのレビューによると、「巨人」の分類に齟齬があって、原作のファンには気になるようだ。
まあ、少年マンガにありがちで、設定には風任せなところがあったろうとは思うから、どうでもいいといえばどうでもいいが、こういうマンガの「読解物」は、原作の「設定」をキチンと押さえた振りをしてから奇想天外なことをいうのが定石ではある。しらんけど:cf. 『磯野家の謎』
解剖学者なら巨人の分類より先に「解剖学的にありえね〜」と醒めてしまうかもしれないが、著者自身アーティストとして創作意図をクールにリスペクトしているのがいい。
途中、筆者が東大で経験した解剖実習のようすが描写されていて、同じ業界として興味深い。
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