フェルソン 読める!胸部X線写真 改訂第3版、Felson’s Principles of Chest Roentgenology 5E

Felson's Principles of Chest Roentgenology, A Programmed Text: A Programmed Text

Felson's Principles of Chest Roentgenology, A Programmed Text: A Programmed Text

Goodman MD FAAC, Lawrence R.
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『フェルソン』は、医学・医療の文化の一部をなしている。原著初版が1965年に出版され、現在第5版になっている。この間、医学生が胸部X線写真を読めるようになるのを助けてきた。およそ3世代くらいは、この本で読影を学んだことになる。この日本語版の訳者も原著初版で学んだという。

原著初版はFelson、Weinstein、Spitzの3氏による共著だった。「シルエットサイン」を提唱したのはFelson氏である。1999年の原著第2版でGoodman氏が著者を引き継いだ。2006年の第3版で他のモダリティーも加わり、CD-ROMが添付された。2014年の原著第4版では、CD-ROMの代わりに電子版が添付された。2020年の原著第5版では画像などのアップデートが施されている。CTなどのモダリティーが加わったので、頻繁なアップデートは必要になろう。実際この日本語版のエコーはちょっと古ぼけている。

原著第2版から日本語版がでるようになった。現在の第3版は原著第4版に相当する。いずれも原著からの遅れは1年だけで、ニーズに応えている。原著第5版(後述)に相当する日本語版も近日中かもしれない。

本書の特徴は、すべてがクイズ形式になっていて、それを解きながら自習するようになっていること。といっても、問題を寄せ集めた問題集なのではなく、全体で論理的に設計された学習プログラムになっている。評者は授業のスライドやプリントが穴埋め式になっているのが苦手で「もう答え分かってるから話を進めてッ(>_<)」となるのだが、self-pacedなのは楽しい。正解が問題の横にあってすぐに見られるのもいい。巻末に正解と解説がまとまっている形式は、面倒なのである。

Self-pacedなのはいいのだが、すぐに飽きて放り出しがちなのが問題になる。本書にはストーリー性があって退屈な反復にならないのがいい。また、独特のユーモアがあって、何か変なものが脈略なくソッと忍ばされている。それら全体に一本、本柱が通っている。

 

1995年頃のBeanie Babies を撮影したと思われる。ビーバー、ペンギン、ウサギ? ビーバーペンギンはmintならかなり高額だが、写っているのにはタグが外されているのでどうだろうか。ウサギにはタグが付いているようなのでそこそこ高額。

 

アメリカンな大喜利

 

イントロダクションにある例題は外せない。例題と言うより、執筆のポリシーだ。また、裏表紙と巻頭にある「フェルソンの10箇条」もチェックしよう。

 

イントロダクションにある例題

 

フェルソンの10箇条「優れた生徒が少ないのと同様、優れた教師もそんなにいない」w

 

読み進めてみよう。胸部の画像診断、特に呼吸器系は概ねカバーされている。心臓の画像診断はアナザーストーリーとして、他書に進むなり、エコーのプローブを持つなりしよう。

 

もくじ

 

見開きで使うようになっていて、左ページに写真があり、それに関する問が右ページにある。印刷の質は上々で、ディテールや陰影がよく再現されている。

 

左ページに写真、右ページに問題

 

X線写真だけでなく、CT(スライス、thick slice、VR)、MR、エコーもある。

 

CT

 

VR

 

MR

 

エコー

 

間質性肺炎の読影は理解が難しいポイントだが、丁寧に説明されている。十八番のシルエットサインがあるのはもちろんだ。

 

間質性病変

 

シルエットサイン

 

解剖学的な構造との対比は少ない。あっても模式図が多いが、ひとつだけネッターの図があった。

 

ネッター

 

他のエルゼビア社の教科書と同様、本書にも日本語版と原著の電子版が添付されている。表紙の裏側のコードを入力するとみられるようになる。日本語版は紙面のままのPDF。英語版はInkling上にあり、動画もある。印刷の網点がないので、紙面より画面上の方が画像はみやすいと思う。一方で、インタラクティブになっていないのはつまらない。選択肢に○を付けたり、ペンで書き込みをしたりできるとよいのだが(英語版は正解を出したり引っ込めたりできる)。

 

日本語電子版

 

英語電子版

 

原著『Felson’s Principles of Chest Roentgenology』はすでに改訂され、第5版になっている。

全体的には大きなアップデートはないが、いくつかの画像のアップデートされている。X線写真もデジタルのと差し替えられている。画像の変更に伴い、本文も摺り合わせられている。

原著の方が日本語版より判型が小さいので、少し持ち運びしやすい。裏表紙に折り返しが付いていて、見開きの右ページの正解欄を隠せるようになっている。少し幅が広すぎるので、折るなり切り詰めるなりして調整しよう。

印刷は日本語版の方がきれいだ。

 

画像が差し替えられた

 

裏表紙の折り返しで正解を隠す

 

第5版にも電子版が付属している。第5版では付録が増量された。本文の表示が変わった。第4版では誌面と同様に画像と文章とを同じ画面で見られたが、第5版では本文が表になり、画像はリンクをクリックするようになった。これは使いづらいし、正解が出っぱなし。改悪だ。

Inklingのようなフロー形式の表示には端末の画面サイズに影響されにくいという利点はあるのだが、本書のような画像の多い書籍だと紙面のままのPDFのほうが使いやすいのではないか。フロー形式にするなら、UIをもっと作り込まないとだめだ。

日本語版の電子版はPDFになるだろうから、早期の改訂を期待する。

授業との関係でいますぐ読むなら今の日本語版でOK。ちょっと様子見できるなら日本語版の改訂を待つのもアリ。

 

使いにくくなった電子版