超入門! スラスラわかるリアルワールドデータで臨床研究
リアルワールドデータから質の高い研究をするためのガイド。医学関係でどんなデータを利用できるか調べる必要があって読んでみた。
新型コロナウイルス感染症の関連で、治療薬やワクチンの臨床試験が報じられるようになった。ランダム化比較試験(Rondomized Controlled Trial;RCT)やエビデンス(根拠)の強さが議論されることもある。
RCTは治療薬・治療法やワクチンの開発で、その効果を確認・測定するために行われる。被験者をランダムに2群に分け、一方に調べたいもの(開発中の治療薬など)、他方に対象として使うもの(形だけ同じで薬効のない薬など)をわりあてる。これらの差から効果を調べる。
RCTはエビデンスは強いものの、大規模になりがちで大金が必要だ。資金不足ではしょぼいRCTにしかならない。昨年のファイザー/ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンの米国での臨床試験では約4万4千人が参加した。12歳以下に接種対象を広げるための臨床試験でも約4千500人が参加した。ワクチンの治験参加への謝礼金は日本円で数十万円ともされる。
ランダム化のルールを破る被験者が相次いでエビデンスが下がってしまうこともある。非常に稀な副作用は、大規模な臨床試験でもみつからないこともある。そもそも、RCTを適用しにくいテーマもある。致死的な疾患の場合、対照群は治療しないという治験は倫理的に成り立ちにくい。
そこにリアルワールドデータ(Real World Data;RWD)の価値がある。一定のルールでたくさん集まったデータ(ビッグデータ)なら、意味のある研究対象になる。とはいえ、ちゃんと考えてやらないと、エビデンスにはならない。本書のようなガイドが必要だ。
臨床研究で使われるRWDには、大きく分けて3種類あるという。
- 患者レジストリー(多数の医療機関が協力して持ち寄った診療データ)
- 保険データベース(健康保険の請求情報などから集めたデータ)
- 電子カルテデータ(電子カルテから抽出したデータ)
いずれもハッシュ化などの処理によって個人は特定できないようになっている。
本書では、この分類に沿って代表的なRWDが紹介され、特徴や使いどころが説明されている。それぞれのRWDを使った実際の研究例もあり、参考になる。
続いて、研究のまとめ方が論じられる。ありがちな査読への文句の言い方など具体的で、役に立ちそうだ。
最後の章にある研究の心得は、RWDに限らず臨床研究一般にも当てはまるだろう。
実は無料で使えるオープンデータを探すヒントになればと思っていたのだが、臨床関係のRWDは有償のが多いようだ。それもそうか。
一昨年の本だけれども、陳腐化しやすい分野でもあるだろう。適時改訂を続けてほしい。
データをゲットしたらどうするか。これらを読もう。
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