骨学のすゝめ
骨学実習の実習書。共著に「Medical Science Club」とある。ナンダコレハ?
愛知医科大学の学生の部活動らしい。臨床医学に進んだ医学生らが、臨床の視点から解剖学を振り返りながら制作したという。
学年が進んで臨床実習に参加するようになると、担当の医師から「解剖で習ったよね?」と(そんなことも知らないの)という勢いで詰め寄られ、(授業でやったかな?)とキョドる学生は後を絶たない。もしかすると本当に授業でやっていたかもしれないし、『グレイ解剖学』には書いてあったかもしれないが、そうだとしてもそのときは気に留めなかったのだろう。もっと確からしいのは、そう訪ねた医師自身が、専門を決めてから解剖を勉強し直したら教科書に書いてあった、というあたりだ。こういうことは時間のムダなので、すぐ先の臨床の授業で使われる知識は解剖の授業でも習えたほうがよい。
解剖学の教員は臨床医学までカバーしきれないし、臨床医学の教員は解剖の授業など忘れているので、臨床医学を解剖学と混ぜるのは、医学科4〜6年生や研修医のほうがうまく考えられる。
ひとつの章が骨学実習の1回に相当するのだろう。それぞれが3つのパートから構成されている。
- 各章の始めの総論
- 実際の実習での作業を指示する「MISSION」
- 臨床医学にかかわりをつける「Advanced Course」
骨盤の章をみてみよう。冒頭に「Orientation」があって、その章での学習目標が箇条書きで示される。つづく本文も箇条書きだ。描き下ろしの図は、正確な形状をクリーンに描かれていて、立体感もあって好ましい。一部の図(サイン入り)は「Medical Science Club」の作品だ。商業誌なので、イラレとフォトショを学んでプロ同等の描画を習得して欲しかったところではある。
「MISSION」では、臨床医学で使われる項目を実地に学ぶ。ここでは、上前腸骨棘やJacoby線などの体表の目安から学んでいく。寛骨と仙骨を組み合わせ、計測も試みる。
「Advanced Course」では分娩から骨盤を考える。
ここまでは、ストレートフォアワードな文脈だ。骨学実習の数年後に学ぶポイントがおさえられていて好ましい。
この流れに外れて「Tea Time」というコラムがある。また、巻末に日本での骨学の歴史が数ページ記されている。いかにも歴史オタクな解剖学っぽい内容だ。その筋のヒトが書きたかったのだろう。そういえば、本書のタイトルが「すゝめ」になっているのもそういうことだろうか。
長年国内で使われてきた『骨学実習の手びき』よりは、よほど楽しく学べるだろう。一方で、世界全体の流れとして、解剖学の授業時間は年々圧縮されている。本学でも来年度から半減近くになるはずだ。本書の分量がそこにフィットするかというと、悩ましい。コンテンツの取捨選択や調整はあってもよさそうと思われる。
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