2014年度CT課題の総評
班で議論しながらも、一人ひとりが工夫して課題を作成していて、努力のあとがわかります。また、CTのウインドウの選択や調節を多くの人が理解し実践できていました。これらは誇らしいことです。
一方で、科学的な文章の様式や、事実のみに拠る書き振りを十分に理解しないまま仕上げてしまったのも多かったようです。CT課題用に用意されていたテンプレートを使うだけでもよくなってたはず。
仕入れた知識に振り回されている人もいました。頼りない推論を重ねて論説を台無しにしています。
病変の同定や死因究明にこだわりすぎ、肉眼解剖で可知な範囲を見定め損ねた例もありました。これも論を空虚にしてしまいます。
解剖学の範疇をしっかり学び、観察を丁寧にし、逐一記録し、それらから分かる範囲で落ち着いて考え、知らないことを専門の文献で裏付ける。図が論を根拠づけるように、よく考えて設計する。それらを順序よく書き、レイアウトする。−−それでうまくいきます。
試験成績とCT課題の成績との間の相関は弱いです(寄与率 r2 = 0.34)。試験勉強とは違う能力を伸ばす機会だったのかもしれません。このような能力は、一度二度の練習ではなかなか身につきません。今後も同様の機会あるごとに、熱心に取り組みましょう。
よく見られた欠陥
図
- 文章で説明するだけで、図がない。文章なら何でも述べられるので、図で裏付けないと。
- 図の組み合わせ方やラベルのつけ方が自己流。実際の科学論文をいくつかみてまねよう。
- 何が描かれているのか伝わりにくいスケッチ。対象をどう準備するか、広く描くのか拡大するのか、描く向きをどうするか、ラベルをどうつけるか。こういう工夫がなければ、仮に写真を使ったとしても同じ。
- スケッチの向きが変。CTと合わせるなどポリシーをもって。
文章
- タイトルに工夫がない。具体的でない、意味不明、冗長など。
- 要旨が本文全体の要約になっていない。
- 本文の項目順が乱雑。重複も。胸部から腹部へ、器官系ごと、重要なものを先に、など。
- 形容詞は避ける。たとえば、小さい、大きいといったときに、筆者と読者の大きさの規準は同じではない。計測して数値で。
- 比喩も同様。肺の性状をスポンジになぞらえる例があるが、スポンジも様々。読者がどれを想起するかわからない。
- 色調の表現があいまい。意図通り読者に伝わるように工夫。「肌色」は差別的とされることがあるので、避けよう。
- 取り上げられた項目がつまらない(*)。自分に興味あるか、自分の勉強になるか、読者はどう思うか。例えば、石灰化を全身詳細に述べてもつまらない。肺区域、冠動脈、肝区域など、やれば後で役に立つはず。
引用
- 臨床の範疇の議論には文献から引用を。
- 勉強に使っただけの文献が「引用」文献になっている。
医療上の事柄
- 死亡診断書と死亡自画像検査結果通知書が混同されている。前者は役所に出す書類。後者は本学のAiセンター独自の書類。
- すりガラス、浸潤影、コンソリデーション、透過性亢進、気管支壁の肥厚、など、CT所見特有の専門用語に逐一応答して変なことになっている。これらの意味をよく理解して大局をみよう。
- 肺区域、肝区域の間違い。
- CT上の同定にあり得ない間違いがある。
スタイル
- フォント、行間、見出しの形などがまちまちで、読みにくい(*)。ワープロのスタイルシートの機能を利用されたい。
* 減点にはしていません。