もうすぐ解剖ニュースレター #3 巨人の肩に乗る
2年生諸君、
解剖学の教科書は読んでみましたか? 今日は、医学や解剖学に関する読み物について。
世界中の医学生の多くが使う教科書、『グレイ解剖学』(*)は、もともと1858年にイギリスで生まれました(+)。筆者のグレイ博士は切れ者で野心家の、28歳の外科医。挿画を描いたカーターは気の弱い外科志望の24歳の学生でした。
- 『グレイ解剖学の誕生–二人のヘンリーの1858年』
『グレイ解剖学』の成功はカーターの精緻な挿画に拠るところも大きいといわれます。しかしグレイはそれを認めようとせず、カーターは長く悩むことになります。『グレイ解剖学』の改訂まもなく、グレイは天然痘により34歳で死亡。カーターは過去を捨て去るように、英領だったインドのボンベイに職を求めます。
外科学が急速に発展を遂げていた時代であり、外科医の基礎として解剖学が意味を持っていたようです。まさにイギリスはビクトリア王朝時代。探偵小説『シャーロック・ホームズ』の背景でもあります。
このころ以前の外科は、激痛に叫ぶ患者を刻み、手術を生き延びた患者も大抵は感染で亡くしてしまう、というものでした。それを現代の外科のように変えたのが、麻酔法の発明、消毒法の発明、細菌の発見でした。
- 『外科の夜明け–防腐法 絶対死からの解放』
『外科の夜明け』を読んで外科医を志した、という医師は少なくありません。これは抄訳で絶版ですが、古書で数百円で手に入るし、読みやすいのでお勧めです。
いずれの本も、それぞれの経緯を生き生きと描いています。これから皆さんが学んでいく医学は、先人達による幾多のブレークスルーを受け継いだ由緒あるもんだ、ということがわかるんじゃないでしょうか。
* 教科書の『グレイ』はGray、ドラマはGreyです。
+『グレイ解剖学』初版は電子化されています。古書市場でもみかけます。
では。
機能形態学 教員