アクチンのプラス端、マイナス端の別名について解説
アクチンのプラス端は「反矢尻端(barbed end)」、マイナス端は「矢尻端(pointed end)」ともよばれる。
これは、次のような実験からきている(Ishikawa, H et al. (1969). J Cell Biol, 43(2), 312-328., 他多数):
ミオシンをタンパク分解酵素で切断し、ATPase活性のある部分だけにしたものをヘビー・メロミオシン(HMM)という。HMMとアクチン線維を反応させると、アクチン線維にHMMが結合し、矢尻(矢の先端部)のような構造を作る。この構造を “arrowhead” と呼び、矢の先端側を “pointed end” 、後の矢羽根の側を “barbed end” と呼ぶようになった。pointed endがマイナス端、barbed endがプラス端に相当する。
アクチン線維とHMMとが結合したものの電子顕微鏡写真
出典:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022283698917156
arrowheadは日本語で「矢尻」という。”head”と「尻」が紛らわしいので、日本語に翻訳するときに悩むところだ。ライフサイエンスの分野ではarrowheadを直訳して「矢頭」ということもあるが、造語で、他では一般的でない。研究者の日常会話では、「ポインテッドエンド」、「バーブドエンド」と外来語的に話すことも多い。
「矢尻」は「鏃」とも表記する。なぜ「尻」なのかはいろいろ考察があるようだ。
「矢先」は「鏃」の同意語として国語辞書に掲載されている。arrowheadの訳語として「矢尻」が気になるようなら、「矢先」にするとよいかもしれない。