解剖学用語って、変

解剖学用語を決めているのは日本解剖学会だ。改訂13版が最新で、2007年に書籍として刊行されている。
解剖学用語を学んでいると、なんかエキゾチックな用語がある。前の改訂のときの用語委員だった先生がかつて当学にいて、むかし授業で訊いた話:
解剖学用語では、繊維を「線維」と書く。そう定めたその先生によると、「繊」では書くのがいちいち面倒なので、画数の少ない「線」にしたのだそうだ。顆粒を「果粒」にしたのも同様。おかげで医学の業界では「線維」や「果粒」が普通になった。


これらは生物学の世界でも許してもらえるようになったが、他の世界では通じない。いまは物書きはコンピュータでやるから「繊維」や「顆粒」だってかまわない。むかしのめんどくさがりの先生につきあうこともないやね。
同様の「めんどくさいから置き換えちゃったよ」用語は、最近の試験にもでてくる:
「外果」:本来は「外踝」。「外顆」は誤字が流通しかかっているものらしい
「中殿筋」:「殿」は本来「臀」
旧字体がいつまでも使われている、というのもあったが、改訂13版で当用漢字にしてもよくなった。つまり、旧字で漢字を習った用語委員たちが世代交代されたということだ。
しかし、まだ他の業界にそれが浸透していない。たとえば、CBTの問題文では、「頚」は「頸」にしなければいけないことになってる。ATOKの医学用語の仮名漢字変換辞書でも旧字体で出やがるんだ。
生物学での用語と食い違うものもある。「腎細管」が「尿細管」になってる。「renal tubule」の訳語なら前者のほうが適切だ。誤読も通用している。「腔」は本来「コウ」と読むので、「腹腔」は「フッコウ」だ。国語の先生なら「フククウ」はバツかも。
共通の用語は意思疎通を確かにするためのものだからリスペクトすべきだ。しかし、別に絶対精神の定めた永劫普遍正確無比唯我独尊のものではなくて、めんどくさがりで限定的なこころの所有者達がうりうりやっているうちに流通するようになったもので、諸行無常だってことさ。
他にも変なのがないか、探してみよう!