胸部の実習課題の解説
課題に出したムービーを含む、診断から治療までのムービーのアーカイブ:
ca.zip
課題提出は締め切ります。締め切り後も受け付けはします。
概要:
この患者は60代の男性で、右冠動脈閉塞による心筋梗塞になり経皮的冠動脈形成術(PTCA)を受けた。また、左冠動脈の枝にも狭窄があったため、予防的にPTCAで処置された。
ポイント:
- しばしば心筋梗塞は関連痛で始まる。これは患者本人にも判断を遅らせる元になる。一方、その性質をよく理解していれば、迅速的確に判断して命を救えることがある。
- 冠動脈造影やPTCAには、冠動脈の解剖を立体的に理解していることが必須である。ムービーと実際のご遺体の心臓とをよく見比べて、それを理解しよう。それができるチャンスは今だけ!
経過:
夕方頃から肩から首にかけての重苦しさがあった(*1)。医者に行くように家人にいわれたが、安静にしていると少しよいような気がして様子をみていた。夜半になると息苦しさと胸の重苦しさで眠れないほどになった。いよいよ苦しそうなのを家人が見かねて救急車を呼んだところ、救急隊員は上記の様子から冠動脈疾患を疑い、心臓血管センターに搬送した。
*1 関連痛
診断と治療:
経過、症状、心電図から心筋梗塞が疑われたので、緊急で冠動脈造影が行われた。右冠動脈起始部近くが閉塞していたため、PTCAとステント留置がなされ、右冠動脈の血流は回復した。幸い心筋障害は軽微で、不整脈も現れなかった(*2)。左冠動脈鈍角枝にも狭窄があったので、心筋梗塞症状の改善が確認された後、予防的なPTCAとステント留置がなされた。
*2 洞房結節や房室結節は右冠動脈の血流を受けることが多いため、右冠動脈閉塞による心筋梗塞では、洞不全や房室ブロックが後遺症として残ることがある。
ムービー:
7-26-1〜8は、最初のPTCAのときのムービー(*3)。左冠動脈の鈍角枝に狭窄があり、潅流が他の枝に比べて遅れている(1)。右冠動脈の起始部近くが閉塞している(2;出題)。ガイドワイヤーを閉塞部に通し(3)、バルーンを閉塞部まで進め(4,6)、バルーンを広げて閉塞部を拡張させた(7)。先端部の小さいバルーンは、血栓の破片が先の動脈に流れ込まないようにするためのもの。無事に血流が回復した(8)。
8-7-1〜7は、2回目のPTCAのときのムービー。PTCAを受けた右冠動脈には再閉塞もなく経過は順調(1)。左冠動脈の鈍角枝に狭窄があり、潅流が遅れている(2,3;出題)。右冠動脈に入っているステントの影が見える。バルーンを通し(4)、拡張させて狭窄部を広げると(5)、潅流が改善された(6)。7はカテーテル刺入部の大腿動脈。
*3 日時がムービーに入っている
課題の評価:
上記が「正解」だというわけではない。分量が多ければいいというものではない。出典を示せば引用もOK、出典の示されないコピペはNG。出典の示し方は「医学論文作成チュートリアル」で習得済み? なはず? だっけ?
- 一般的な調査が的確か
- ムービーをよく観察し、その結果を記述しているか
- 観察結果について調査を踏まえて考察し、論理的な判断をしているか
- 以上が科学的文章として明快に記述されているか