Clinical Neuroanatomy made ridiculously simple とその日本語版

「made ridiculously simple™」シリーズの一冊。このシリーズは基礎、臨床、国家試験までカバーしている。その多くを本書と同じGoldberg氏が書いていて、米国では好評だ。この「臨床神経解剖学」も神経解剖学の本の中ではAmazon.comのレビュー数で上位にある。

A5より少し大きな判型で、厚さ7.5ミリしかない。小さな本だ。これがどう使われるべきか、前書きにある。

IMG_2555のコピー
前書き「基礎医学を学ぶには二種類の本がいる。一つは大きい標準的な参考書。本書はもう一つの種類で、小さくて臨床の視点にフォーカスしている。短いけれども読み応えのあるサマリーだ。」

「本のボリュームは小さくなっているが、項目数は大きな本と変わらず高密度」というレビュー書は多い。最初に読む本としてそういうのを選ぶと、内容を飲み込みにくく、かえって大変なことがある。本書では、臨床の視点からトピックを選んで構築してある。

筆者自身による挿絵(表紙絵を除く)は全部モノクロだ。へたくそだし、文字や線が潰れかけていたりするが、いいたいことはわかる。

IMG_2559
挿絵:大脳皮質の小人がMAD誌のアルフレッドになっている

「神経解剖学」の王道的な内容は、大胆に削られている。小脳、視床、基底核の神経回路は、知っていても臨床で役に立つことはないと、省かれている。上行伝導路のシナプスの数も、臨床上は不要な知識と切り捨てられている。皮質脊髄路の交差しない線維については、そういうのもあるけど気にしなくていいよ、と括弧書きだ。

IMG_2556
脊髄の伝導路のまとめはこれだけ。上行する伝導路はどれも一本線だ

しかし、臨床の鑑別診断で必須になるようなことはていねいにまとめられている。

錐体路の麻痺の上位ニューロンか下位ニューロンかによる違い
運動麻痺の上位ニューロンか下位ニューロンかによる違い

本書にはCD-ROMが付属していて、「インタラクティブ」なアプリが入っているが、これはあえて使うまでもなさそうだ。

スクリーンショット 2015-09-04 15.34.50
附属のアプリからのキャプチャ。本にある図が清書されただけ

電子書籍版はない。もっとも、小さい本なのでKindleやiPadを持ち歩くより軽く済むとはいえる。

原著第3版の日本語版がある。原著は約25ドル、日本語版は約2,000円だから、日本語版の方が安価だ。判型はA5、厚さ9ミリ。カバー付きで紙質は原著よりよい。

翻訳者は集中治療・救命救急の先生だ。原著のノリを尊重して口語訳になっている。よみの難しい漢字にはふりがなが、意味の難しい専門用語には訳注がある。またすべての図に方位が追加されている。図のつぶれがちで読みにくかった文字が日本語で打ち直され、読みやすくなっている。

日本語版にはCD-ROMが付属していないが、むしろなくてもよい。

IMG_2563
日本語版の図

本書をこなしたら詳しい専門書に進もう。神経解剖学や画像解剖学の授業で断面解剖を求められるなら、図の多いテキストが必要になるだろう。臨床でも、神経内科や脳神経外科の専門になればより詳しい神経解剖学が求められるだろう。神経科学に進めばより詳しい基礎的な知識が必要になる。