
iPad Proなど高解像度のディスプレイとペンタブレットを備えた端末により電子教科書が実用的になってきている。また、冊子体に電子版へのアクセス権が付属している教科書が増えている。医学の教科書には厚くて思いものが多いけれども、電子化で何冊でも軽いまま持ち歩ける。教科書選択で考慮しておこう。
Elsevier eLibrary
エルゼビア社の日本語の電子書籍。『グレイ解剖学』、『グレイ解剖学アトラス』、『ネッター解剖学アトラス セット版』など、最近の教科書に付属している。データはデジタル著作権管理(DRM)付きPDFで、冊子体と同じに表示される。図が高画質。見開き表示可能。パソコンではブラウザで、iOSではアプリで(オフライン可)みる。マーカーを引いたり、ペンで書き込んだりできる。
eLibraryの電子書籍が付属しているのは冊子体だけ。同じ本でもKindleなど他のバージョンには付属しない。
Elsevier eBooks+(旧Student Consult)
『グレイ解剖学』など、エルゼビア社の冊子体の教科書の多くに 旧Student Consult のアクセスコードがついており、英語原著の電子書籍にアクセスできる。
旧Student Consult にアクセスすると、同社の新しいプラットフォームeBooks+に転送される。ここでこのコードを使うと、iPhone、iPad、Android、Web で全文や追加教材にアクセスできるようになる。冊子体を買えば冊子体と原著の電子教科書の両方が得られる。
Elsevier社は2022年6月28日以降、同社の電子教科書をStudent ConsltからeBooks+に移行した。Student ConsltはInkling社のプラットフォームを使っていたが、Inkling社の電子書籍配信事業は大幅に縮小されているようだ。実際、同社のトップページからは教科書配信のリンクが消えている。
eBooks+の電子書籍は、VitalSourceから提供される。モバイル端末ではVitalSource Bookshelfアプリを使うようだ。ようだ、というのは、この記事の筆者の手元では再現できていないため。既存のアカウントがあってうまくいってない。
医書.jp
2014年に国内の医学系専門書出版社 5 者(医学書院、医学中央雑誌刊行会、学研メディカル秀潤社、南江堂、南山堂)の設立した医書ジェーピー株式会社の提供するプラットフォーム。
iOS/iPad OSやAndroidのアプリ、Mac/Windowsのブラウザで読める。立ち読み機能もあるので、買う前にチェック。
Kindle
Amazonの運営する電子書籍。Kindle端末のほか、Mac/Windowsのブラウザ、iOS/iPad OSやAndroidのアプリで利用する。
買う前に無料サンプルをチェック
Kindle版の医学書を買うなら、まず無料サンプルをダウンロードして、使いやすいかチェックしよう。
Kindleは、小説など一続きの文章を主体とする書籍を電子化することを主な用途として規格化された。冊子の誌面のまま再現するのではなく、文章を画面に合わせて流し込む、リフロー型だ。
Inklingもリフロー型のフォーマットだが、それに合わせて内容が再構成されている。一方のKindleはそのような作り込みがなく、単純に文字が画面に流し込まれるので、医学書のような書籍では読みづらいレイアウトになることも少なくない。
図の多い教科書にも適するよう拡張されたeTextbook形式も使われるようになった。eTextbookでは、紙面そのままのレイアウトで表示される。利用できる端末/アプリが限定されるので、購入前にサンプルでチェックすること。
M2PLUS
医学書専門の電子書籍のプラットフォーム。冊子体の紙面のままの電子書籍と、リフロー型のとがある。後者には使いにくいのもあるので、立ち読み機能で内容確認したい。
M2PLUSは、株式会社ジェイマックシステムの事業だったが、2017年にエムスリー株式会社に譲渡された。エムスリーはインターネットを利用した医療関連サービスを提供する会社。国試ビデオ教材のTECOMも2016年からエムスリーのグループ会社。
MediLink
メディックメディア社の手がける電子教科書配信。『病気が見える』、『QB』、『イヤーノート』、『レビューブック』などの臨床医学書、医師国試対策書の電子版が読める。『病みえ』については1〜10巻のセット、冊子体と電子版のセット(学生限定)もある。
標準医学シリーズ
医学書院の「標準医学シリーズ」の電子版。基礎セット、臨床セット、基礎±臨床セットの3通りのセットがあり、いずれも購入後6年間のサブスクリプション。期間内の改訂は無料。