電子教科書を使う

iPadとApple Pencilで電子教科書を使うと、マーカーを引いたり描き込みでき(どこまでできるかはアプリによる)、紙の本のような使い勝手だ。

紙の本と違って、描き込みしても簡単に消せる。付箋も好きなだけ入れられる。マーカーや付箋のリストが自動で生成されるので、自分用の索引を作れる。

紙の本に電子版へのアクセス権が付属している教科書なら、家では冊子体、授業では電子版というように、便利に使える。iPadをバンパー付きのケースジップロックのフリーザーバッグで保護すれば、解剖学実習室への持ち込みも気楽だ。

教科書選択で考慮しよう。

医書.jp

医書.jpの電子書籍は、iOS/iPad OSやAndroidのアプリ、Mac/Windowsのブラウザで読める。立ち読み機能もあるので、買う前にコンテンツの使い勝手をチェックできる。

医書.jpの書籍のフォーマットは複数あるけれども、解剖学のテキストはPDF。紙面のままの表示で、マーカーを引いたり描き込みしたりできる。

医書.jpは、2014年に国内の医学系専門書出版社 5 者(医学書院、医学中央雑誌刊行会、学研メディカル秀潤社、南江堂、南山堂)の設立した医書ジェーピー株式会社の提供するプラットフォーム

 

医書.jp版『プロメテウス解剖学コアアトラス』に描き込みした

 

医書.jpの書棚表示

 

M2PLUS

M2PLUSは、医学書専門の電子書籍のプラットフォーム。冊子体の紙面のままの電子書籍と、リフロー型のとがある。後者には使いにくいのもあるので、立ち読み機能で内容確認したい。

M2PLUSにも書籍のフォーマットが複数あるけれども、解剖学のテキストはPDF。紙面のままの表示で、マーカーを引いたり描き込みしたりできる。南山堂医学大事典などへのリンクが自動的に表示される(リンク先を見るには別途購入が必要)。

M2PLUSは、株式会社ジェイマックシステムの事業だったが、2017年にエムスリー株式会社に譲渡された。エムスリーはインターネットを利用した医療関連サービスを提供する会社。国試ビデオ教材のTECOMも2016年からエムスリーのグループ会社。

 

M2PLUS版『人体発生学講義ノート』に描き込みした(リンクは非表示に設定してある)

 

Elsevier eLibrary

eLibraryは、エルゼビア社の日本語の電子書籍。『グレイ解剖学』、『グレイ解剖学アトラス』、『ネッター解剖学アトラス』、『ガイトン生理学』など、最近の教科書に付属している。データはデジタル著作権管理(DRM)付きPDFで、冊子体と同じに表示される。パソコンではブラウザで、iOSではアプリで(オフライン可)みる。マーカーを引いたり、ペンで書き込んだりできる。

eLibraryの電子書籍が付属しているのは冊子体だけ。同じ本でもKindleなど他のバージョンには付属しない。つまり、電子版しかいらないとしても、Kindle版ではなく冊子体を買った方がお得。

ペンでの描き込みにバグがあるらしく、横線が必ず入る。

 

eLibrary版『グレイ解剖学』にマーカー(緑)を引き、描き込み(黒)をした

 

Kindle

Kindleは、Amazonの運営する電子書籍と専用端末。Kindle端末のほか、Mac/Windowsのブラウザ、iOS/iPad OSやAndroidのアプリで利用する。

Kindle版の医学書を買うなら、まず無料サンプルをダウンロードして、使いやすいかチェックしよう。レイアウトが崩れていたり描き込みや検索ができなかったりなど、医学書には使いにくいのもあるから。

Kindleにはいろいろなフォーマットがある。Kindleはもともと、小説など文章を主体とする書籍を主な用途として規格化された。冊子の誌面のまま再現するのではなく、文章を画面に合わせて流し込む、リフロー型だ。医学書のような図の多い書籍では読みづらいレイアウトになることが少なくない。

図の多い教科書にも適するよう拡張されたeTextbook形式も使われるようになった。eTextbookでは、紙面そのままのレイアウトで表示される。利用できる端末/アプリが限定されるので、購入前にサンプルでチェックすること。

 

『PT・OTビジュアルテキスト 解剖学』のKindle版

 

MediLink

MediLinkは、メディックメディア社の電子教科書の環境。『病気が見える』、『QB』、『イヤーノート』、『レビューブック』などの臨床医学書、医師国試対策書の電子版が読める。『病みえ』については全巻セット、冊子体と電子版のセット(学生限定)もある。

電子版は冊子体のままの表示ではなく、電子版向けに再構成されている。iPad miniのような小さめの画面でも読みやすい。マーカーのみ可能。

 

『からだがみえる』電子版

 

人体の正常構造と機能アプリ

『人体の正常構造と機能』に付属している電子版。ビューアをダウンロードし、コンテンツをインストールして使う。

ビューアには、使い勝手をスポイルする欠点がいくつかある。本を閉じてまた開いたときに、前回読んでいた位置が記憶されず、最初のページに戻ってしまう。メニューが常時表示されていて、紙面のみの全画面表示ができない。

『人体の正常構造と機能』

 

Maruzen eBook Library

丸善雄松堂の提供する図書館向けの電子書籍サービス。本学も契約している。学内LANから図書館のサイトにアクセスして電子書籍を検索すれば読める。

閲覧はオンラインで同時アクセス数が僅少(書籍による)で、一定数ダウンロードもできるが制限キツく(書籍による)、本学で購入した解剖学のタイトル数も少ないので、解剖学実習で皆で使うのは現実的ではない。

 

『イラスト解剖学』をMaruzen eBook Libraryでみる(同時アクセス数=1;1人当たりDL上限=60ページ)

 

標準医学シリーズ

医学書院の「標準医学シリーズ」の電子版のセット売り。基礎セット、臨床セット、基礎+臨床セットの3通りのセットがあり、いずれも購入後6年間のサブスクリプション。期間内の改訂は無料。

 

Elsevier eBooks+(旧Student Consult)

eBooks+ はエルゼビア社の電子教科書のプラットフォーム。コンテンツはePUB3という標準的なフォーマットで、画面サイズに応じて文字が流し込まれる。

『グレイ解剖学』など同社の教科書の多くに eBooks+ または 旧Student Consult のアクセスコードがついており、英語原著の電子書籍にアクセスできる。旧Student Consult にアクセスすると、eBooks+に転送される。

eBooks+でこのコードを使うと、iPhone、iPad、Android、Web で全文や追加教材にアクセスできるようになる冊子体を買えば冊子体と原著の電子教科書の両方が得られる。

Mac / PCではブラウザで、iPhone / iPad / Androidでは専用アプリeBooks+を使う。Webではオンラインで、eBooks+では端末にコンテンツをダウンロードしてオフラインで読む。

Elsevier社は2022年6月28日以降、同社の電子教科書をStudent ConsltからeBooks+に移行し始め、2023年8月にはユーザーのコンテンツの移行が完了したようだ。

 

eBooks+アプリ

 

群馬大学付属図書館で契約している電子書籍

本学の付属図書館で契約している電子書籍サービスがいくつかある。クラウドベースで、描き込みできない、ダウンロードに制限あるなど、使い勝手はよくないが、とりあえずの役には立つ。

KinoDen(紀伊國屋書店)

 

eBook Library(丸善)

 

eBook Collection(EBSCO)

 

群馬県立図書館・前橋市立図書館

群馬県立図書館前橋市立図書館には電子書籍サービスがある。収蔵数は限られており、医学関係の本は少ないが、無料で利用できる。利用には、それぞれの図書館の図書カードが必要。

群馬県立図書館は、群馬県内に在住、通学、通勤していれば、利用できる。電子書籍サービスは、本学も契約しているKinoDen。

前橋市立図書館は、前橋市・高崎市・伊勢崎市・渋川市・玉村町・吉岡町・榛東村に在住しているか、前橋市内に通勤・通学していれば利用できる。電子書籍サービスは、Libby。

 

群馬県立図書館の電子書籍サービス

 

紙の本をスキャンして電子化する

紙の本をスキャンしデータ化する前に、著作権法で許されるかどうかを確認しよう。

紙の本を私的にデータ化して使うには、いくつかの方法がある。コストの掛からない順に挙げよう。

  • Adobe Scanアプリを使う。画質は劣るが、紙の本が冊子体のまま残る。手間もかかる
  • スキャン代行サービスの業者に依頼する。手間をかけずに画質のよい電子化ができる。送付の手間と多少の料金は必要で、冊子体は廃棄される
  • 紙の本を裁断し、ScanSnapなどのドキュメントスキャナーで電子化する。画質がよく、手間が掛からないが、機器への投資が必要
  • ブックスキャナーで冊子体のまま電子化する。スキャンの手間が大変で、冊子にも負担が掛かるが、冊子を残して電子化できる。図書館がアーカイブ目的で使用するブックスキャナーは、高額だがベージめくりが自動化される

 

複数の本を同時に使う

電子版で使いにくい部分があるとすれば、複数の本を同時に使うとき。冊子体なら机に並べるだけだが、アプリだと表示できるのが1冊だけなど、ちょっと難しい。

医書.jp、M2PLUS、Kindleは、パソコンのWeb版なら、別ウインドウで複数の本を同時に見られる。ただし、KindleにはWeb版(Kindle Cloud Reader)に非対応の電子版が少なからずある。

iPadでもアプリが別なら、2冊はみられる。

複数の端末を用意すれば、その数だけみられる。ただし、サービスによりアカウントごとの端末数に制限があるのでそれが上限にはなる。しかし、解剖学実習なら、班員でiPadを持ち寄ればよい。

 

iPadで医書.jpとM2PLUSを2分割表示