Human Embryology and Developmental Biology, 5E

古典的・形態学的な人体発生学に、発展著しい分子生物学・発生生物学の成果を編み込んだ教科書。トピックが厳選され、なんとか読み通せる分量に納められている。

教科書を選ぶとき、序文の確認が重要だ。著者の意思がそこにハッキリ示されていて、それが読者にとって本文中で実現されているかどうか — そうでないなら、たぶんだめな教科書だ。

本書の序文には、「発生生物学の知見が爆発的に増えているなか、このテキストに何を含め何を捨てるか」、「自分がどういう本を書こうとしているのか」、「辞書的なテキストなどというものにならないよう」というように、教科書の設計に関する著者の自問自答があり、熟慮がうかがえる。

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なにを含め、何を捨てるか、それが大問題 conundrum だ

同じようなトライアルをしているテキストとして、『ラングマン人体発生学』と『ラーセン人体発生学』がある。これらのうちでは最も学びやすいのではないか。

写真、模式図、表が多く使われていて、レイアウトに余裕がある。模式図は落ち着いた色調で目に優しい。

分子生物学に振り回されすぎていないのが好ましい。例えば消化管の発生では、胃と中腸の回転のような形態変化が、明快な図で押さえられている。しかし、研究途上でまだまとまりのつかなそうな器官形成の分子機構には、深く踏み込んでいない。

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消化管の回転

一方で、研究の進んでいる四肢発生などについては、図や表でまとめながら、分子機構に踏み込んでいる。

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四肢の軸形成の分子機構

随所に、分子から発生、解剖までを概観できるまとめの図がある。解剖の前後に読むと、構造をより深く納得できるのではないか。

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頭頸部の発生を、Hoxクラスタから脳幹・脳神経、咽頭弓、菱脳節・体節、大動脈弓、咽頭・喉頭まで縦横にまとめる

なお、本書の日本語版もあるが、古い版なので避けた方がよい。改訂の予定はないようだ。

もし発生生物学が不要なら『ムーア人体発生学』などから、自分で勉強できるだけの分量のを選ぶ。発生生物学を学ぶなら『ギルバート発生生物学』がわかりやすい。