はじめてのグラフィックレコーディング、Stay’s Anatomy

「グラフィックレコーディング」(略して「グラレコ」)というのがちょっと流行っている。会議のときに書記がホワイトボードに記録していくけれども、これをビジュアルに上手にまとめると会議がうまくいく、らしい。

これ、いろいろと応用ができる。講義を聴きながら板書の代わりに絵でまとめるとか(いまはハンドアウトとか録画とかが配布されるから昔のような板書は要らない)、患者や家族に病状を説明するときに話しながらまとめのイラストを描くとか、勉強のまとめをイラストでつくるとか。

国試対策ビデオで有名な三苫先生は、話しながら自分でグラレコして講義しているともいえる。イラストでまとめるという点では「オペレコ」もグラレコと同じだし、ねじ子先生の『ヒミツ手技』シリーズもそんな感じだ。チームでやる鑑別診断にもグラレコのテクを使えそうだ(3:35までスキップ)。

 

 

 

グラレコの本、あるいは少し間口を広げて、伝わるイラストの本はすでにいくつも出版されている。Amazonのレビューをみて評判がよく、試し読みで絵柄をチェックして好みのを選んだらいい。グラレコの本なのだから、文章主体でなくてグラレコ自体が分かりやすいかがポイント。文章が多かったり、グラレコが雑然とした感じだったり(個人の感想です)というのもあるかもしれない。スケッチ指南寄りの本だと、パースの取り方から説明されても、というのもある(会議のペースについていけなそう)。

はじめてのグラフィックレコーディング』はそんな観点で選んだ。

著者紹介からして、グラレコだ。絵を描くのが好きな子どもがIT系のGUIデザイナーになって、グラレコを始めた、という。本書は著者がnoteでやっているシリーズ「グラレコのヒミツ」が元になっている。

 

著者紹介

 

 

絵の入門書の全てを網羅する常套句、「絵が苦手でも大丈夫」からスタートだ。プロからそういわれてもな〜、医者に置き換えたら「解剖が苦手でも外科医になれる」とはいかないですし〜。

いや、いったんここでストップ。もし勉強が上手にできるようになるかもと考えて読むつもりなら、先にVARKで自分の傾向を知っておこう。Visual系だったらオススメ。Read/Writeに偏っている人には辛いかもしれない。

VARK:簡単なアンケートから自分好みの勉強法を判定できる

    • Visual 視覚的なものに惹かれる
    • Aural 聞いたり話したりするのが好き
    • Read/Write 読んだり書いたりするのが好き
    • Kinesthetic 動いたり作業したりが好き

 

絵が苦手でも大丈夫

 

著者の絵は、シンプルでボールドでスッキリと分かりやすく、やわらかみがあり、ユーモアも感じられる。本には質感のよい上質紙が使われていて、ウォームグレーの地に文字やイラストが配され、めにやさしい。こんな絵が描けたら、と感じられるなら読んでみよう。

スタートはペン4本と紙。絵画の入門書のように、絵の具や筆の説明だったり、コピックが何十色もでてきたり、アプリの使い方からゴリゴリ攻められたりしないのがいい。

 

筆者のようなスッキリと整ったイラストを描くポイントからちゃんと説明されていて、確かに「絵が苦手でも大丈夫」という気がしてくる。単純な形の組合せで表情を表現する練習をしたら、やれるかもと思えるかもしれない。

 

ペン4本と紙でスタート

 

整ってみえる線を引くコツ

 

表情を描く練習

 

グラレコではイラストだけではなく言葉も重要な役割を果たす。ギュッと簡略化しても的確にいいたいことが伝わることが大切になる。ああ、このあたり、マスコミは下手すぎることがめだつ。

6月にワクチン2回目接種、高齢の男女2人死亡…同じ施設の入居者」(読売新聞)表題だけだと、ワクチンが原因で接種後2か月も経ってから死亡したとも受け取れる。実際は、高齢者がワクチン完了していたけれどもコロナにブレークスルー感染し、基礎疾患もあったために重症化して亡くなった、という内容。

 

伝わる言葉選び

 

読み進めると、より多くの色にトライしたり、iPadでグラレコを制作したりする。

 

色を増やす

 

iPad、Apple PencilとProcreateを使う

 

さらに、Miroというのもあって…いや、先走りすぎては息切れする。ペン4本と紙から始めよう

 

『Stay’s Anatomy』にはグラレコが実際に使われている。本書は、2020年にコロナでステイホームになって授業が中断されるなか、PT/OTの国試対策のために教員が自主的にリモートでやった授業がもとになっている。著者はコロナ以前からオーディオ・ビデオ教材に取り組んでいた。タイトルの「Stay’s」は、 著者がステイという人だというのではなく、ステイホームのステイと『グレイ解剖学』のグレイとのだじゃれだ。

表紙や帯のキャッチに99%とか90%とかの数字があると(ほんとかなあ?)とまず思ってしまう。受講生のアンケートかららしいが…いや受け流そう。

もとが動画なので、内容は、動画の文字起こしと画面キャプチャー(筆者がジェスチャーで何かを説明している場面)を編集し、出版社手持ちの解剖図を挿絵にしたもの。どちらかというと口数・手数多め。VARKでAuralとKinestheticのスコアが低い人にはキビシイ。

そこで章末のグラレコだ。本文で硬化したビジュアル脳がほぐれる。グラレコでわかったので本文は後回しにしようか、という気さえする。印刷がスミ版だけなのは残念。

グラレコを描いたのは、理学療法士の「りょーこ」さん。Twitternoteをやっている。どんなきっかけでグラレコを始めたのだろうか?

ちなみに、本の内容はPT/OTの国試に沿っているので、解剖生理を初見で学ぶ人には役立ち処が少ないかもしれない。医学科で解剖の授業があるはずなのにステイホームを余儀なくされたら、取り敢えず『イラ解』『グレイ』を読む、だろうか。本学では授業期間中「Grant’s Dissection Videos」を使えるはずなので、それを見て自分でグラレコするとか。

 

本文はこんな感じ

 

神経系のグラレコ

 

循環器のグラレコ