エキスパートナース、レジデントノート、医学のあゆみ:2021年7月の新刊

[amazonjs asin=”4758116644″ locale=”JP” title=”レジデントノート 2021年7月 Vol.23 No.6 絶対に見逃してはいけない画像診断8疾患〜致死的な疾患を見抜くために、正常解剖と典型的な異常所見を押さえる!”][amazonjs asin=”B006LEW4AS” title=”医学のあゆみ NMDA受容体と精神疾患 277巻11号雑誌”]

 

エキスパートナース 2021年7月号

 

ともかくまず緊急特集を読もう。シン・ねじ子のヒミツ手技は6月号に続いて新型コロナワクチンの第2弾、副反応だ。いつもどおり、イラストと手書き文字で、具体的・実際的で、わかりやすい。

いま、新型コロナワクチン接種で、医療関係者の協力が求められている。接種の手技は6月号でチェックしたけれども、それより心配なことがある。副反応で人が倒れたらどうしたらいいだろう? アナフィラキシーショックだと、時間勝負だ。

備えあれば憂いなし。接種会場にヘルプに行く前に脳内で訓練しておこう。

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アナフィラキシーと血管迷走神経反射

 

ちいさなコツも大切

 

まとめ(りさまる大好き)

 

表紙に戻ろう。看護師さんが、窓の朝日に向かって伸びをしている。あくびの眼には涙が。

問:この行動を解剖生理学的に説明せよ。

 

7月号表紙

 

あくびの生理的効果についての総説がある。

これによると、あくびには次のような働きがあるという。

  • 覚醒を促す
    • 眠気はしばしばあくびを生じる刺激になる
    • あくびによって頚動脈小体が機械的に刺激されて覚醒が促される
  • 脳を冷却する
    • あくびの動作により末梢および脳血流が促進されて冷却が高まる
    • 表情筋の動きによって顔面の血流が促進され熱の放散が増える
    • 表情筋の動きが涙を流させて頭蓋からの熱の拡散を助ける
  • 社会的な共感を惹起する
    • あくびには伝染性がある
    • 共感力はあくびの伝染性と相関する
    • 社会的相互作用に障害を生じるような疾患の患者ではあくびの伝染が減少する
  • 耳に掛かる気圧を解除する
    • 鼓膜張筋とあぶみ骨筋の弛緩によって耳管が開放される
  • 低酸素を軽減する
    • おそらくはこの効果はない

つまり、休暇の看護師さんが、そろそろ起きるかと覚醒し、脳内に溜まった熱を放出し、それを見た読者にも休息を促している、ということだ。

共感には、休息を促すことがある一方、ストレスを抱えた人に対する共感が二次的にストレスになることもある。それによる疲労は「共感疲労」と呼ばれる。コロナでそういう疲労が増えたと言われている。看護師はもともと共感力の強いひとが多いので、共感疲労も受けやすい。7月号の特集の1つだ。

頑張っているときの心的疲労は、自分では気づきにくい。この特集を読んでセルフケアしよう。

 

二次的外傷性ストレス

 

國松淳和氏、岩田健太郎氏の連載も興味深い。國松淳和氏のは処方箋。オニマツ氏は照林社界隈にはいないようだ。

岩田健太郎氏のは考え方。ゼロ・イチではなく、連続量で物事をとらえること。

 

國松淳和氏

 

岩田健太郎氏

 

裏話は担当編集者のnoteで

note | エキナス7月号のご案内(裏話満載回)

 

成長物語、100日目に突入

 

 

レジデントノート 2021年7月

 

絶対に見落としてはいけない病態というのがある。どんな病態でも見落としてはいけないが、特にだ。診断や治療が進歩すればこういう疾患は増える。

  • 思いつきさえすればすぐに診断できる
  • 適切に処置すれば治療可能
  • 時機を逃せば取り返せない(救急の場合も、緩徐な経過の場合もある)

救急の範疇なら、たとえば前項からのつながりでアナフィラキシー。診断と処置の訓練をしておこう。慢性ならたとえば、消化管手術後のウェルニッケ脳症。吸収不足によるチアミン欠乏によるもので、チアミン補充で治療できるが、脳障害が進んでしまうと不可逆になる。重症では特徴的な作話を伴う認知障害を示すコルサコフ症候群に至る。

レジデントノート7月号の特集は、見逃してはいけない病気の画像版。病歴から診断を想定して、最適なモダリティーをオーダーして、読影をミスらなければ診断できる疾患が8つ。

  • くも膜下出血
  • 急性喉頭蓋炎
  • 気胸
  • 大動脈解離
  • 大動脈瘤破裂
  • 肺塞栓症・深部静脈血栓症
  • 門脈ガス
  • 上腸間膜動脈閉塞症

いくつかみてみよう。最初のは、数日前からの構語障害、歩行障害、異常行動の老年の女性。頭痛のエピソードは記載されていないが、くも膜下出血と診断できるだろうか? 実際、CTを撮ってみたのは、脳梗塞を疑ったからのようだ。

医師国家試験では、くも膜下槽に高吸収域のある典型的なCT像が使われることが多い。正答は簡単だ。非典型的なCTの過去問(*)をやったことがあれば、この症例もわかるだろうか? 「絶対に見逃してはいけない」といっておいて見逃しそうな画像を出題する、というのがポイントだ。

* この過去問は見逃しの例。急な頭痛の症例だが、ただの頭痛として鎮痛薬で済まされている。再出血なく事なきを得たのはたまたま。診察で髄膜刺激症状をチェックしてみようと思い出していたらよかったのに。

 

少し時間のたったくも膜下出血のCT

 

もうひとつ。若年女性の急な胸痛と呼吸困難。そのときの行動から肺塞栓症は考えにくいとすれば気胸だけれども…目をこらして図をみてみるが、虚脱した肺の縁が見づらい。この印刷でこのサイズだと、網点が先に目立ってしまってムリかもしれない。生データをDICOMビューアでちゃんとみるべし、という教訓だ。

 

気胸があるはずの胸部単純X線写真

 

 

医学のあゆみ 277巻11号

医学のあゆみは週刊。毎号特集が組まれ、医学分野の新しいトピックの総説が掲載される。

277巻11号の特集は、NMDA受容体。これに対する抗体が脳炎を起こすことがあり、抗NMDA受容体脳炎と呼ばれる。急に精神病のような症状を呈することから、精神病と診断されることがある。実際、統合失調症として治療されていた患者の一部は抗NMDA受容体脳炎ではなかったかともいわれる。

かつて「狐憑き」「悪魔憑き」(映画「エクソシスト」のモデル)とされた事例のうち一部はこれだったとされることがある。いくつか映画化されている。

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自然に軽快することも多いが、重症化して後遺症が残ったり死亡したりすることもあり、早期の治療が望まれる。約半数に奇形腫などの腫瘍を合併する。抗体の検出によって診断でき、不可逆的障害に至る前なら治療可能なので、「見逃してはいけない病気」の1つだ。

週刊のせいかもしれないが、ちょっと読みづらい。略語が未定義で使われたり、意味が通らなかったりする。総説というより自己紹介になりがちなこともある。編集がもうすこし介入したらより価値が上がりそうだ。

 

抗NMDA受容体脳炎

 

本書で読みたかったのは、実は、連載のほう。The Journal of Japanese Studiesという雑誌に掲載された総説の翻訳で、一本の論文を分けてある。日本におけるワクチン不信を、19世紀後半から概観し世界的な状況とともに位置づけている。日本が1920年代にはワクチン開発国だったこともわかる。

The Journal of Japanese Studies自体はProject MUSEでオンライン配信されているのだが、この論文の掲載されているVolume 47, Number 2は未掲載。日本語訳が先に公開されたことになる。

 

ワクチン不信を巡る謎