人体の細胞生物学

細胞生物学の教科書の新刊。医学生らに人気の高い『人体の正常構造と機能』の姉妹巻として企画された。『人体の正常構造と機能』と同様に、細胞生物学が豊富な図版を使って見開きワンテーマで記述されている。また、電子版も提供される。著者は国内の研究者たちで、本学からは編者含め3名が参加している。

細胞生物学に関しては『細胞の分子生物学』、『Molecular Cell Biology』、『Cell Biology』など、名著が多い。しかし、医学科の緊密なカリキュラムには既存のテキストは大部過ぎ、必ずしも臨床医学につなげられないことも多い。本書では、細胞生物学や分子生物学のエッセンスがビジュアルに簡潔に記載され、加えて臨床医学での問題を細胞や分子の視点で裏付けるようなテーマが加えられている。本書のタイトルに「人体の」とあるのはそういうことだ。

『人体の正常構造と機能』との姉妹巻

日本の研究者たちが参画している

まえがきから

内容をみてみよう。ワンテーマのチャンクで見開きにまとまっているので、学びやすい。見出しや小見出しが短文になっているのは、『ストライヤー生化学』や『細胞の分子生物学』などからのレジェンドだ。見出しを追って図を眺めるだけでも全体を概観できそうだ。授業に役立つかどうかは授業との関係によるだろうけど、自分で読んで学ぶのには役立つし、少ない労力で大切な知識を得られるだろう。

第1章と第2章は、細胞生物学、生化学、分子生物学の教科書ならおよそ載っているテーマがカバーされている。第3章は、ヒトを含む哺乳類の個体の活動を視点に据えて細胞を記載している。第4章は、ヒトの病態を細胞や分子から説明するテーマが選ばれている。

第1章から、クエン酸回路

第2章から、小胞輸送

第2章から、マイクロフィラメント

第3章から、SRYによる性決定

第3章から、インスリン

第4章から、癌の細胞生物学

第4章から、糸球体の変性疾患の分子機序

『人体の正常構造と機能』と比べると、価格は『人体の細胞生物学』の方が安いけれど、ページ単価にするといずれも約20円なのでページ数なり。そして高コスト。

参考:『細胞の分子生物学』のページ単価は15円、『グレイ解剖学』は約13円、『標準』シリーズは10数円、『病みえ』シリーズは約7〜10円。

『人体の正常構造と機能』と同様、電子版も提供されていて、iOSまたはAndroidの専用のアプリで読める。大きな本を持ち歩かずに済むのはありがたい。MacとWindowsは非対応。

巻末の小さな折り込みにQRコードとシリアル番号がある。これをアプリに入力するとデータがダウンロードされ、冊子体と同じ内容を読めるようになる。ユーザー登録は不要。ただし、他の端末で読むには、前もって元の端末のアプリからデータを削除する必要がある。不用意にアプリを削除したり、端末を初期化したりすると、データを再ダウンロードできなくなる。注意したい。

画面を縦にすると1ページ表示、横にすると見開き2ページ表示になる。

よい:

  • 文字はアウトラインで、拡大縮小してもギザ付かずキレイに表示される。
  • 大部分のイラストもアウトラインなので、表示がキレイ。
  • 文字列を選択してコピーすることができる。

改善してほしい:

  • 写真やビットマップのイラストは、どれも高圧縮・低解像度で、細かな部分が見づらいことがある。
  • マーカーを引いたり、メモを記入したりなどのアノテーションができない。
  • 本を閉じると、次に開いたときに最初のページが表示され、前に読んでいたところを覚えていない。
  • ページ繰りが画面の横スワイプだけ。他のアプリやハードウエアと揃えられるよう、他の方法も選べるように。

折り込みをハサミで切り開く(ミシン目はない)

見開き表示

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