QUICK生理学・解剖学

QUICK生理学・解剖学〜人体の構造と機能・病態生理

QUICK生理学・解剖学〜人体の構造と機能・病態生理

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コメディカル校の授業科目でいえば、「解剖生理学」のテキスト。内容は、解剖学よりも生理学と病態生理学にウエイトがある。

『グレイ解剖学』を読み『グラント解剖学実習』で実習するような内容は少ない。位置関係とか、体表解剖とか、関連痛とかはない。眼瞼下垂・縮瞳・発汗低下で肺癌かもというような思考にはならない(ホルネル症候群)。

表紙が、白地に黒文字の、ミニマムでシックなデザイン。しかも帯がない。見返しに、立方体を積んだような模様のエンボスペーパーが使われている。組子模様にもみえる。ヂャケットの裏地を飾るようなセンスだ。

「QUICK」は「Quality, Unified, …」というような頭文字になっているらしい。同じデザイン言語の『薬理学』のほうは「FLASH」で、「Flexible, Lively, …」。こういうアナクロな企画も敢えてなんだろう。シリーズ化はあるんだろうか。

ちなみに、タイトルのロゴの線の交点が、少し白っぽく見えるのは、錯視。

 

見返しのエンボスペーパー

 

カバーの袖には、「15章134項目に要点を凝縮」とある。半期週2回や前後期週1回、全30回の講義で、2回ごとに1章進めばコンプできる。一章あたり平均27ページ。

袖には「使い方」もあって、自己学習向けではある。講義がリモートになったり、オンデマンドになったりすると、こういう学び方になろう。

一度学んだ生理学のことをあとで確認したいとき、答えの探し場所にするにもいいかもしれない。たとえば、大動脈小体と頚動脈小体って、どっちが何センサーでどの脳神経だっけ? というようなとき。

 

もくじ

 

使い方

 

系統ひとつを30ページほどでカバーしてあるので、説明は凝縮され、要約的で、漢字と熟語が多く、むだばなしがない。

凝縮された説明文の例に、呼吸器の進化のところをみてみよう。生物進化の教養本(例えば『進化の技法――転用と盗用と争いの40億年』)ならひとつかふたつの章に相当する内容が、一段落になっている。条鰭類とか肉鰭類とかポリプテルスとか知らないと、スッとは読めなそう。

ちなみに、呼吸器の進化はコアカリの外の話しだ。看護のコアカリには進化は含まれない。医学のコアカリには生物進化も含まれるが、

  1. 進化の基本的な考え方を説明できる。
  2. 生物種とその系統関係を概説できる。
  3. アミノ酸配列や塩基配列の比較による分子系統樹を概説できる。

と概論的。でも、この章の筆者は、これを入れたかったんだろうな。

 

凝縮された説明文

 

心臓の電気生理のところをみてみよう。

表紙は白黒だったが、本の中はフルカラー。余白がひろく、落ち着いた色調で、みやすい。

タイトルのすぐ下に要点が数個まとめられている。チェックボックスにチェックを入れられれば、学習完了になる。

本文には図が豊富で、多くは模式図で、新作またはリデザインのようだ。いずれも、複数のことを関連付けた「まとめの図」になっている。ここの図1なら、心臓の概形と、刺激伝導系の構造と、各部の活動電位と、心電図の成り立ちとをひとつの図で概観できる。

本文の後にある練習問題は、医師や看護師などの国家試験の過去問、あるいはそれに似せた創作問題が使われている。解答と解説はウエブ。

見出しや重要語には英語が併記されている。

 

要点整理

 

本文

 

練習問題

 

本書はコロナ後の本だが、関連する話しが特に設けられている、ということでないようだ。新型コロナワクチンで心配されたアナフィラキシーの話しは、凝縮された一段落だし、間質性肺炎の「間質」が何かとかはなかった。

 

アナフィラキシー

 

肺の構造