レジデントノート増刊 今こそ学び直す! 生理学・解剖学

研修医向けの専門誌「レジデントノート」の2021年の夏の増刊は、『生理学・解剖学』。

サブタイトルの「あのとき学んだ知識」、解剖学と生理学は、学年が進んだり臨床に入ったりすると勉強し直したいと思うものだ。思うだけで実際には勉強しない。そりゃそうだ、『グレイ』と『ガイトン』、さらに『Ross』や『カンデル』や『ロビンス』もとなると、現実から遠くなる。とりあえず今必要なだけの基礎医学は、なかなか求めてもみつからないものだ。

それでも、自分の基礎力に心許なさは消えない。診療には患者の中で何が起きているかを理解することが重要で、それには基礎力がどうしても要る。そうでないと、素っ頓狂なことになってしまう。しかも、解剖学や生理学を学んだころからまだ数年とはいえ医学は変わる。意外とブレークスルーがある。学生のときに既に世間では知られてたはずでも、授業には入ってなかったこともある。

だれか教えてほしい。

本書はそういうことなんだろうと思う。臓器別・疾患別に、生理学と解剖学から病態を説明する。第1〜5章が内科系の疾患で、病態生理がまとめられている。つづく第6〜7章は整形外科で、解剖学と神経解剖学が主になる。

本編が2色刷、巻頭にカラー口絵がある。医書.jpの電子版でみてみよう。

目次:

 

章立ては臓器別。主な疾患や病態が7〜8ページでまとめられている。整形外科以外は内科の先生が書いていて、病態生理から診療の裏付けをしてある。

病態はまず分類から入る。細分化ではなく、鑑別を広くカバーするための分類。

 

病態はまず分類から入る

 

冠動脈のAHA分類

 

COVID-19以降の本なので、ネーザルハイフローやハッピーハイポキシアといった話しも少しある。ネーザルハイフローの理解には死腔の知識が必要だし、ハッピーハイポキシアの理解には呼吸関係の受容体の知識が必要になる。

 

「Happy hypoxia」という流行り言葉への提言。「おわりに」に筆者の意志がある

 

解剖図はあまりでてこなくて、あっても概念図。概念図過ぎて実地の解剖から離れているのもある。思考が空想や観念の世界に逝ってしまわないよう、解剖学のアトラスもみておきたい。解剖に限らず、ん? と思ったら、手元の基礎医学のテキストも見返したいものだ。

 

観念的な模式図。呼吸中、胸膜腔はこの図のようには隙間はあかない(?)右肺を内側からみたところ? 左肺を前からみたとすれば肺根が変なところに付いている

 

組織学・病理学もある

 

覚えにくい血液凝固。覚えていないと、抗凝固剤を選べないし、効き過ぎたときの対処がわからないが、このページをみれば済みそう

 

整形外科になると、一転、解剖学と神経解剖学になる。解剖を終えてすぐのタイミングなら、それ知ってると思うことが多いはず。「それ知らない」とか「解剖でみたっけ?」というのが大部分な感じだったら、本当に勉強し直した方がいいかもしれない(腕神経叢の枝を最低5本みてないんだったら、もうね)。

 

解剖実習でみた脊柱管、話しに聞いたヘルニア、神経の診察でならうことを結びつける

 

五十肩と回旋筋腱板

 

腕神経叢はマスト。解剖実習のときに枝を全部みておかないといけなかったはずだが、どうだろうか?