局所解剖学アトラス

イラストによる局所解剖学のアトラス。日本語版(1983年)、英語版(1985年)、ドイツ語原著(1982年)とも、絶版になっている。

現在入手できる解剖学アトラスの図版には、過去の図版を参照したり、レタッチしたりして制作されたものが少なくない。解剖学の履修生に課すスケッチ課題なら、他人のスケッチをスケッチして提出すれば即失格になる。しかし、彼らの学ぶテキストが「パクリ」の図ばかりだとしたら、厳罰もはばかられるというものだ。

本書の図は、いずれも実際の解剖標本に基づいてメディカルイラストレーターのGerhard Spitzer氏によって描かれている。ペン画に彩色したものだが、質感や立体感があり、正確で精緻ながら明快で美しい。図版は解剖の順序に従って論理的に計画され、配置されている。解剖実習で参照するのによい。

解剖学用語は、日本語にラテン語が付記されている。英語が要求される授業では使いにくさはあるかもしれない。

絶版になっているのは残念だ。本学の医学図書館には蔵書がある。同じイラストレーターによる事典は継続されている。また、本書と対になる系統解剖学のアトラスは現在も継続されている。

 

実際の解剖標本を元に描画された

 

もくじ

 

もくじ

 

海綿静脈洞付近の動脈・静脈・神経

 

縦隔

 

局所解剖学のアトラスとして臨床解剖学もカバーされている。形態の多様性(変異)や、簡単な臨床関連事項も含まれる。

鼡径管と精索が、解剖の順を追って複数の図版で示されている。層構造やその間を走る神経や脈管の位置関係がわかりやすい。実際の標本をみて描かないとこうはなりにくいだろう。他のテキストの同様の図版とみくらべてみよう。

 

大動脈弓の枝の変異

 

 

臨床関連事項

 

鼡径管の解剖