プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト

ドイツのThieme社の解剖学の教科書の日本語版。『プロメテウス解剖学 コア アトラス』と同じ画像が使われていることが特徴。画像数が多いので、アトラスを別途用意しなくても読み進められる。筆者は米国の解剖学者で、『プロメテウス解剖学 コア アトラス』にも参画している。
2015年の原著の初版が好評かつフィードバックが多かったらしく、2017年に第2版になった。主な変更点は、初版に目立っていた誤りの修正と、初版では無視されていた画像解剖学の取り込みだ。
初版の日本語版は『Essential解剖学』として南江堂からでていたが、第2版は医学書院になり、ブランディングも同社で好評の「プロメテウス」を冠することになった。

全体の構成は、簡単な総論とそれに続く局所解剖からなっていて、『グレイ解剖学』、『臨床のための解剖学』と同様だ。

総論で取り上げられるのは、方向用語などの概説と、運動器・循環器・神経系など全身にわたるような器官系。その他の系統は各論で語られる。今回の改訂では、画像解剖学の概説が加わっている。


各論から胸部をみてみよう。一見してわかるのは、図の精緻なことだ。文章は全体が箇条書きになっていて、情報密度が高い。適宜、医療画像が使われているのは、第2版で加わったポイント。臨床との関連事項は「臨床医学の視点」という囲み記事になっている。



構造の理解や臨床医学との関連で重要なところでは、発生学も解説されている。『グレイ解剖学』ではおおむね省かれているポイントだ。

章の最後には画像解剖学と章末問題がある。


比較のために、『グレイ解剖学』と並べてみよう。判型はほぼ同じだが、厚さはほぼ2/3。紙面の面積では63%だ。
紙面を見ると、レイアウトは『グレイ解剖学』のほうが余白が多く、ずも大きく、ゆったりとしていることが多い。フォントサイズや行間は同じ、一行の文字数も27文字(全角)で同じ。『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』は全体が箇条書きになっていて、表にまとまっている部分が多い。そのため情報密度は高いようだ。
『グレイ解剖学』と比べて見劣りするのは、電子版がないこと。附属していないだけでなく、Kindleや医書.jpにもない。『グレイ解剖学』に比べればコンパクトとはいえ、大きく重いことにはかわりない。電子版も使えたらいいのだが。



試しに初版で不足に思われた関連痛についてみてみると、第2版でも不十分だった。そもそも索引に項目が見当たらない。新しい教科書なので、フィードバックを得てこれからよくなっていくのだろう。