二関節筋を体感しよう

筋の多くは関節を1つだけ跨ぐ。単関節筋である。これに対し、四肢の筋には関節を2つ跨ぐのも多い。二関節筋という。

各関節の伸側と屈側にそれぞれ単関節筋と二関節筋がある。これらが常に張力を保ち、中枢からの複雑なコントロールなしに、スムーズな四肢の動きを機械的な機構で実現しているという。

 

二関節筋の協調制御理論(重力が育てた運動制御のメカニズム)

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熊本 水賴, 石井 慎一郎
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二関節筋があるために、肢位が関節可動域に影響する。筋の起始停止を考えながら、自分の体で試してみよう。

上腕二頭筋

上腕二頭筋長頭は、肩関節と肘関節の両方に作用する二関節筋である。肩では外転・屈曲、肘では屈曲・回外である。一方の関節でそれらに逆らった肢位を取ると、他方の可動域が減じる。

  1. 上体を起し、片方の上肢を内転させて体幹に添わせる。上腕を外旋させ前腕は回外位にする(肘が後ろを、掌側が前を向く)
  2. 肩関節を伸展(上肢を後方に挙上)させると、ある角度で上腕前面に痛み(または張った感じ;以下同様)が生じる。肩関節で上腕二頭筋長頭が牽引されるからである
  3. そのまま前腕を回内させると(上腕が内旋しないよう注意)、上腕前面の痛みが強まる。肘関節で上腕二頭筋の停止腱が牽引されるからである
  4. 前腕を回外位に戻して肘関節を屈曲させると、上腕前面の痛みが弱まり、肩関節をより伸展できるようになる。上腕二頭筋の停止腱が緩むからである

他の筋も考えてみよう。

上腕三頭筋

  1. 上体を起し、片方の上肢を内転させて体幹に添わせる。上腕を外旋させ前腕は回外位にする(肘が後ろを、掌側が前を向く)
  2. 肘関節を屈曲させる(指先で肩に触れるよう意識して)
  3. そのまま肩関節を屈曲させる(肘を前方から上方に挙げる)
  4. 肘関節を伸展させると、肩関節をより屈曲(肘をより挙上)できるようになる

ハムストリング筋

  1. 立位をとり、片足立ちできるよう手すりなどにつかまる
  2. 片方の脚について、膝関節を伸展させたまま股関節を屈曲(大腿を前方に挙上)させると、ある角度で大腿後面に痛みが生じ、臀が後ろに傾き腰が曲がる。ハードル走を思いだそう
  3. 膝関節を屈曲させると、大腿後面の痛みが弱まり股関節をより屈曲できるようになる

腓腹筋・足底筋

  1. 椅子などに浅く腰掛け、片方の膝関節を伸展、足関節を底屈させる
  2. そのまま足関節を背屈させると、下腿後面に痛みが生じる
  3. 足関節を背屈させたまま膝関節を屈曲させると、下腿後面の痛みは消える

大腿直筋についても体感できるか、考えてみよう

トレーニングやリハビリに関わるようなときに思い出そう。